技能伝承のポイントは?

技能伝承のステップ

 

STEP1.経営
 企業の保有する技術・技能を把握するとともに、企業の理念や戦略に基づき、伝承すべき技術・技能を明らかにする。

 

STEP2.組織
技術・技能の伝承活動を行うための「伝承計画」を作成するとともに、伝承活動を支えるための伝承組織を整備する。

 

STEP3.伝承活動
可能な限り技術・技能の標準化・マニュアル化を進め、計画的OJTにより伝承活動を進めて行く。

 

STEP4.風土づくり
現場レベルの伝承活動を全社的・組織的活動に高め、伝承に積極的でオープンな企業風土を形成していく。




1.中小製造業の技能伝承

技能伝承の必要性

 

 技術・技能は競争力の源泉である。

 

 企業収益の源となるものである。

 

 もし技術・技能が後世に継承されない場合には、どうなるだろうか。

 


 人の世代交代に伴い、技術・技能が承継されていかない場合には、若手が育たず、技能が途絶えてしまう。

 

 情報やノウハウも蓄積されず、新たな製品や製法が生まれてこない。

 

 保有する技術・技能の進歩も生まれず、日々の生産や改善の工夫も生まれてこない。

 

 

 一方で、取引先や顧客の求める製品・技術ニーズは時代とともにレベルが上がっていく。

 

 ライバル企業の技術力も上がっていくならば、自社の製品や製造能力の価値は相対的に後退していく。 

  

 自社の価値あるモノを生み出す能力が、年数をかけて徐々に低下していくのである。

 

 

 こんなふうにして企業の技術力が徐々に低下し、次第に競争力が失われていく。

 

 このように考えれば、技術・技能伝承は企業の永続性に影響に与える極めて重要かつ優先度の高い課題である。

 

 そして技術・技能の伝承活動は、競争力の源泉であるという観点から、戦略的に捉えていかなくてはならない。

 

 

技能とは何か?

 

 技能とは基本的には「機械に代替できない」「人に帰属する」ものであり、

 

 それは業種・業態・企業によってさまざまである。

 

 名古屋商工会議所「技能継承に関するアンケート調査」によると、

 

 熟練技能の作業内容については次のような回答が挙がっている。

 


業種 技能の内容
食品  饅頭・もちの製造工程、あん・生地の仕込み
製粉調整や色調整
醸造機械のメンテナンス、麹作り
微妙な味覚の識別、感応チェック
コーヒーの焙煎技術や菓子製造機の調整・点検・修理
玄米・精米の品質の見分け
新商品の試作、配合、分析
繊維 セーター横編機での編組織の開発サンプル作成
ミシンによる縫製工程
手ざわりによる材料の差異判断

木製品

別注家具の造作、建具
木材のどの部分で製品を製作するかの見極め
塗装、木材の研磨や切断、接着技術
企画開発に基づく試作品の製作
紙加工・出版 段ボールシートや各種板紙による製函作業
ステッチャー打ち
色調の作成や再現・管理
クライアントの要求に基づき試作品を作る
紙加工の印刷、トムソン(抜き)、貼合工程
印刷機オペレーター
化学 ケミカルプラント運転、加工プラント運転(押出、ラミネーション、塗工など)
化学薬品の調合、滴定作業
ポリマーデザインの設計や試作品の製造
設備機器関連のメンテナンスや緊急時の修理、製作、復旧

プラス

チック・ゴム

ウレタンコーティング仕上げ加工、融着加工
量産成型条件の出し方、トラブル時の対応、金型・成型機メンテナンス
ゴム材料の混練作業、設備(金型)の保全業務
フィルム製造工程、厚薄調整並びに巻き取り技術、活性炭焼成工程、スリット口金研磨技術

窯業

製品試作
溶けたガラスを成形桟に供給して自動成形する製造工程のオペレーション
ガラス用金型のメンテナンス作業(特殊溶接と金型抜き)
ガラス成形に伴う金型設計、付帯部位の研究と作成
微粒子パウダーの製造

業種 技能の内容

鉄鋼・

非鉄金属

・金属

特殊鋼二次加工の主工程(伸線、引抜き、酸洗など)
プレス加工機の段取り・調整、加工製品の管理、プレス製品の設計・試作品の作成
金型、治工具、素材等の金属熱処理加工
金属加工の切断のための刃物セッティング
造型枠への中子セット、キューポラの操炉、キューポラ電気炉の補修
高周波熱処理作業、歪取作業
連続引抜作業、設備メンテナンス作業、フォーマー作業、酸洗作業、火花試験作業

一般機械器具

薄板板金、半田付け、製品の歪取り矯正
研磨加工工程、機械メンテナンス
プラスチック切断用刃物(ナイフ)の刃先仕上
マシニングセンターを用い特殊加工をする
長機の熱処理や加工後の歪取り、試作品の加工、組立後の機能調整
汎用工作機械のオペレーティング
専用工作機械のスピンドル等の組立工程
電気機械器具 表面実装装置の操作、ハンダ付
高合金鋼(耐熱鋳鋼)品の溶接
モーダーの手作業による巻線
板金加工における溶接、歪除去作業
精密仕上げ(キサゲ作業)
塗装作業における「艶」「色合い」等の感覚業務や機械設備修理等における音感作業
図面に基づき、旋盤、フライス、溶接、組立を行う技術
輸送用機械器具 半導体、FPDの圧着の良否見極め
板金プレス金型の工程設計や金型仕上げ技術
鉄道車両車体の溶接や歪み取り作業
金属成型加工の試作や仕上工程
新幹線先頭車鋼構体の製作など高度な加工・溶接・仕上げ

精密機械器具

設計に基づき多品種小ロットの精密歯車を作る
鋳造技術、キサゲ加工技術、加工用治具設計
通常の製造ラインではできない特殊加工(特別対応注文)を必要とするレンズの製造
基板アンプ機能調整
深穴加工の工程・ホーニング加工の工程

備考:名古屋商工会議所『技能継承に関するアンケート調査』に基づき作成。



問題の所在

 

 2012年の中小企業白書の調査において、

 

 中小製造業の技術力低下の最大の理由として、「技術・技能伝承がうまくいっていない」ことが指摘されている。

 

備考:「2012年版中小企業白書」に基づき作成

なぜ、うまくいかないのか?

 

 技術・技能承継が上手くいっていない、進んでいないといわれるが、その理由はなぜだろうか。

 

 技能承継がうまくいかない理由は、次の点が指摘される。

 

・指導する人材が不足している。

・受け手となる人材の確保が難しい。

・伝承活動のための時間的余裕がない。

 


 また、伝承のための方法が確立されているわけではないので、

 

 伝承方法については企業が個々に考えていく必要がある。

 

 方法が確立されていないということに起因して、次の問題が生じる。

 

・伝承のための方法が安定しない

・効果的な方法が見い出せない

・伝承活動が定着しない

 

 技能承継をうまく進めて行くためには、そもそも伝承のための「方法」をどうするかについて考えなくてはならない。


伝承の「方法」をどのように考えるべきか?

 

 再び2012年版中小企業白書の調査によると・・・

 

 技術・技能伝承を成功させている企業の取り組みとして、

  

①技術・技能の標準化・マニュアル化

②OJTによる技術・技能人材の育成

③社内制度(給与体系の整備、定年延長・再雇用)

 

の整備の重要性が指摘されている。

 


備考:「2012年版中小企業白書」に基づき作成


2.技能伝承の方法を考える

 

 白書の調査にあるように、技能伝承の方法については、

 

 基本的には技術・技能の標準化・マニュアル化、OJTによる技術・技能人材の育成等が中心になる。

 

 ただし、単に標準化・マニュアル化を進め、OJTを通して技術・技能を伝承していくだけでは足りない。

 

 これを全社的な活動として継続的に実施していくための組織や計画、体制の整備が必要である。

 

 また、伝承活動を盛り上げ、企業風土や企業文化のレベルにまで高めていくことが重要である。

 

 一方で、技術・技能は単に教え伝えるだけではなく、時世や経営環境の変化に適合させるように、

 

 技術・技能を発展させていかなくてはならない

 

 こうした長期的・戦略的視点からの取り組みを通じて、技術・技能を確実に後世に承継していくのである。

 

 


技能伝承を成功させるための4つのポイント

 

 以上を踏まえて、技能伝承を成功させるためのポイントを考えてみると、次の4点が挙げられる。

  

【技能伝承を成功させるための4つのポイント】

 

1.戦略的視点から伝承技能を決める

2.技能伝承の仕組み(方法)を導入する
3.仕組みを継続的に運用する 
4.活動を文化や風土にまで高める

 


具体的な伝承方法に落とし込む

 

 以上のポイントを具体的な伝承方法に落とし込むならば、次の4つのステップを経て進めることが考えられる。

 

【技能伝承のステップ】 

 

STEP1.経営

STEP2.組織

STEP3.伝承活動

STEP4.風土づくり

 

 


STEP1.経営

 

 企業の保有する技術・技能を把握するとともに、企業の理念や戦略に基づき、伝承すべき技術・技能を明らかにする。

 

 技術・技能の分類には「スキルマップ」を用いる。スキルマップは、事業への影響度×発生頻度のマップを描き、自社の保有する技術・技能をプロットしていく。

 

 事業への影響度は、その技術・技能が自社から失われた場合に事業の継続性に与える影響をいう。たとえば外注や臨時雇用で賄えないような技術・技能は、事業影響度が大きいと判定する。

 

 発生頻度は、その技術・技能の発揮場面が日常的に発生するのか臨時的に発生するのかという問題である。たとえばルーティンワークは発生頻度が高いのに対して、臨時トラブル対応は通常は発生頻度が低い。

 

【スキルマップ】

①ローカルスキル

・事業への影響度が小さく、発生頻度が低いスキル

・個人が持つ独自の知見やノウハウ

・独自性が強く、標準化になじまないもの

 

②日常業務スキル

・事業への影響度が小さく、発生頻度が高いスキル

・日常のルーティンワークに属し、標準化を進めるべきもの

・習得が容易で、外注や臨時雇用で賄うことも可能

 

 

 

③特殊対応スキル

・事業への影響度が大きく、発生頻度が低いスキル

・突発的に発生する現場修理やトラブル対応スキル

・専門性や習得の難易度が高く、人的な代替が難しい

 

④戦略スキル

・事業への影響度が大きく、発生頻度が高いスキル

・主要取引先の要求事項を満たすための技術的スキル

・習得の難易度が高いが、優先度も極めて高い

 

 

 


【経営判断に活用する】

 スキルマップの分類を次のような表に整理することで、経営判断や具体的行動の立案に活用することができる。

 

STEP2.組織

技術・技能の伝承活動を行うための「伝承計画」を作成するとともに、伝承活動を支えるための伝承組織を整備する。

・経営理念、経営戦略から導出された技術戦略や伝承方針に基づき、伝承計画を作っていく。

・伝承活動を支えるための組織を整備する。会社、経営陣が主導して公式組織をつくる。

 

【伝承組織の整備・伝承計画の策定】


STEP3.伝承活動

可能な限り技術・技能の標準化・マニュアル化を進め、計画的OJTにより伝承活動を進めて行く。

・技術、技能の各テーマごとに標準書作成、マニュアル化を進める。

・OJTは個々の現場作業者に任せっきりにするのではなく、会社全体の活動として計画的に進めて行く。

・ベテランと若手を組み合わせ、経験の共有による伝承活動を進める。

 

STEP4.風土づくり

 

現場レベルの伝承活動を全社的・組織的活動に高め、伝承に積極的でオープンな企業風土を形成していく。

・人を巻き込むプロジェクト型の活動を行う

・プロジェクトリーダーを育成する

・改善活動など、価値を生み出す活動と結びつける

 

【標準化・マニュアル化の例】



3.技能伝承の方法としてVE(Value Engineering)を応用する

技能伝承の仕組み(方法)とVE

 

 技能伝承を継続的に進めて行くためには、技能伝承の仕組み(方法)をつくらなくてはならない。

 

 当社の技能伝承プログラムでは、VE(Value Engineering)の考え方やノウハウの応を提案している。

 

 わが国において主に製造業の価値向上ツールとして発展してきたVEを応用することで、

 

 体系的な技能の伝承活動を行うことができ、技能伝承を効果的かつ効率的に進めることができる。

 

 また、個々の企業の知見に委ねられていた伝承活動に理論的・科学的根拠を得ることができる。

 

 さらに、VEの価値向上プロセスを使うことで、これまでの技術・技能をさらに発展させていくことが可能になる。

 

 

VEとは何か

 

◇ VE(Value Engineering)とは
  

 VEは、1947年にアメリカGE社で開発された改善手法であり、1960年代から日本の産業界で活用されてきた。
 

 我が国では、当初は製造業の資材調達で適用され、次第に設計や開発・製造・流通販売分野に広がっていった。


  現在では、適用業種が製造業から建設業やサービス業、公共事業などに広がっている。

 

◇ 実際の活用例

 

 VEは、たとえば製品のモデルチェンジの代替案の立案や新製品開発等に用いられるほか、

 

 調達資材の代替案、製造工程・物流コストの改善・効率化などで活用されている。
   

 VEには、開発設計段階のVE、製造段階のVE、物流VE、経営管理・間接業務のVEなどがある。

 

 

VEの本質

 

 VEは、機能とコストの両面から対象テーマの価値向上を実現するための手法であり、本来の目的に遡って考察することで、従来よりも価値を向上させる代替手段を考案する。

 


◇ テクニック

 

 VEは、機能とコストの両面から対象テーマの価値向上を実現するための手法である。
 

 


◇ 根本思考

 

 VEは、本来の目的に遡って考察することで、従来よりも価値を向上させる代替手段を考案する。

 


VEのステップ

 VEは、機能定義、機能評価、代替案作成の各ステップを経て、価値を向上させる代替案を創り出す。

 

【VEのステップ】

 

STEP1 機能定義 

STEP2 機能評価

STEP3 代替案作成


VEのステップを技能伝承の方法として応用する

 

 

◇ VEの特徴

 VEは対象テーマの価値を向上させる手法であり、次の特徴を有する。
 

【特徴】

①対象テーマの構造を「見える化」する
②改善対象を絞り込む、特定する
③従来よりも価値を向上させるための代替方法を考案する

 

◇ VEの特徴①~③を『技能伝承』に応用する

 

【技能伝承への応用】

①伝承すべき技術や技能を「見える化」する
②技術や技能の重要度・優先度を評価し、伝承計画を立案する
③従来の技術・技能を発展させる形で次世代へ承継してゆく

 



  VEのステップに従って技能伝承を考えていくことで、効果的かつ効率的な伝承活動が可能になる。

VEを応用した技能伝承活動

 

 VEのステップを技能伝承の方法として応用することで、次の利点が得られる。

 

【VE応用の利点】

 

・戦略的視点から、伝承すべき技術・技能を明らかにすることができる。

・伝承すべき技術・技能の優先順位付けができる。

・運営ノウハウを持った仕組みを構築することで、継続的運用が可能になる。

・理論的根拠を持った仕組みを導入することで、全社的あるいは社外・取引先に対して説得力・PR力が増す。

 

 

【VEのステップを技能伝承に応用する】

VE式改善プロジェクトを導入する

 

 技能伝承を成功させるためには、承活動を継続的に行い、活動を定着化させなくてはならない。

 

 人と組織を活性化させることで、伝承活動に積極的な風土づくりを進めることが重要である。

 

 こうした伝承風土づくり・企業文化づくりを進めるためには、

 


 現場における日々の生産活動と関連づけた、価値を生む活動と結びつけるのが効果的である。

 

 そこで、技能伝承の実行段階において、VE式改善プロジェクトを導入することを提案する。

 

 技能伝承活動の実行に合わせてVE式改善プロジェクトを導入することで、次の利点が得られる。

 

【VE式改善プロジェクト導入の利点】

  

・VE活動を通した伝承風土づくりが可能になる

・OJTを計画的に進めることができ、OJTの効果が上がる

・VE活動本来の利点が得られる 

 

暗黙知の表出化に役立てる

 

 人は知っていることのすべてを語れるとは限らない。

 

 個人に帰属する優れた技能で、言葉にすることが難しいものは「暗黙知」と呼ばれる。

 

 暗黙知は、文書化・マニュアル化が難しい。

 

 そこで個人に帰属する暗黙知を表出化するための工夫を行い、

 

 その上でベテランと若手の体験や知識の共有によって伝達していくことになる。


 

 この点、VE式改善プロジェクトは、一連のプロジェクト活動を通じてベテランと若手が知恵を出し合い、議論する。

 

 プロジェクトのゴールに向けて、ベテランと若手が議論を交わす過程で暗黙知を表出化し、

 

 表出化された知をメンバー間で共有することができる。

 

 こうした知の共有体験を通じて、暗黙知に属する技能の伝達を促進させることが可能になる。

 

 VE式改善プロジェクトは、こうした知の共有体験を通じて、暗黙知の伝承を促進させるという利点を持っている。

 

 


4.まとめ

技能伝承を成功させる

 

 技能伝承を成功させるためのポイントは、戦略的視点・仕組み導入・継続運用・文化風土醸成の4つである。

【技能伝承を成功させるための4つのポイント】

 

1.戦略的視点から伝承技能を決める

2.技能伝承の仕組み(方法)を導入する
3.仕組みを継続的に運用する
4.活動を文化や風土にまで高める

 

 


技能伝承のステップ

 

 技能伝承は、経営・組織・伝承活動・風土づくりの4ステップで進める。

 

【技能伝承のステップ】

 

STEP1.経営
 企業の保有する技術・技能を把握するとともに、企業の理念や戦略に基づき、伝承すべき技術・技能を明らかにする。

 

STEP2.組織
技術・技能の伝承活動を行うための「伝承計画」を作成するとともに、伝承活動を支えるための伝承組織を整備する。

 

STEP3.伝承活動
可能な限り技術・技能の標準化・マニュアル化を進め、計画的OJTにより伝承活動を進めて行く。

 

STEP4.風土づくり
現場レベルの伝承活動を全社的・組織的活動に高め、伝承に積極的でオープンな企業風土を形成していく。

 

VEのノウハウを応用する

 

 技能伝承を継続的に行い、活動を定着化していくためには、伝承のための「方法」を決めることが必要である。

 

 しかし、技能伝承のための一般的な方法論は確立されていないので、企業は個々に伝承方法を考えていくしかない。

 

 現状では技術・技能の標準化・マニュアル化とOJTを組み合わせた伝承活動が行われるのが一般的であるが、成果が不安定で伝承活動が「うまくいっていない」というケースが出ている。

  

 そこで当社では、製造業で価値向上ツールとして実績を積み上げてきたVE(Value Engineering)の手法を技能伝承に応用することを提案している。

 

 VEステップのノウハウを応用することで、伝承活動を効果的・効率的に進めることができ、VE式改善プロジェクトと組み合わせることで伝承活動を定着化させ、技能伝承に積極的な企業風土を醸成する。

 

人材不足は解消されるか

 

 冒頭で挙げた「技能伝承がうまくいかない」3つの理由、すなわち①指導する人材が不足している、②受け手となる人材の確保が難しい、③伝承活動のための時間的余裕がないという問題について、回答を考えてみよう。

 

 ①については、VEの手法を技能伝承に応用することで、プロジェクト運営のスキルを磨き、活動を推進していくためのプロジェクト・リーダーを育てていくことが可能になる。

 

 ②については、古語に「仕組みをつくれば人が集まる」とあるように、技能伝承の仕組みを明確化し、人材育成の仕組みと結び付けて運用していくことで、若手人材がキャリアプランを描けるようにする

 

 また、技能習得・習熟プログラムを社外にPRし、技能向上に意欲のある人材を集めるための素地を作っていく。こうした努力を通じて受け手となる人材の確保を実現していくことになる。

 

 ③については、技能伝承活動をVE式改善プロジェクトと組み合わせ、現場・製品・技術の改善活動と結びつけることで、単なるOJTを超えた「価値を直接的に生み出す活動」に変換し、仕事の優先順位を上げていくことが可能になる。

 

経営者の役割

 

 最後に、技能伝承における経営者の役割について考えてみたい。

 

 技能伝承は企業の永続性に重大な影響を及ぼす事柄である以上、その意思決定は経営者の専決事項である。

 

 技術・技能は企業の競争力の源泉であり、戦略的な視点が必要になる。

 

 それゆえ技能伝承は、経営トップが率先して計画を立案し、活動を推進していくことが求められる。

 

 また、技能伝承は長期の視点で捉えることも重要である。

 

 現場レベルで先輩から後輩への伝承がスムーズにいかなくても、

 

 根気よく、粘り強く、愛情をもって取り組まなくてはならない。

 

 模倣が困難な技術・技能は、習得が難しいものである。

 


 しかし模倣が困難であるからこそ企業の競争力の源泉となりうるのだ。

 


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